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Part3
養老孟司先生から「子育てがつらいママ」によく効くメッセージ
養老孟司先生
北里大学教授
1937年鎌倉生まれ。東京大学医学部卒業。専門は解剖学。
著書は専門の解剖学から、書評やエッセイ、対談など幅広い。
『唯脳論』(青土社)『ヒトの見方』(筑摩書房)『涼しい脳味噌』(文芸春秋)など多数。
解剖学者ならではの独特の人間、世相ウオッチングで若い人から子育て中のママやお年寄りまで熱烈なファンが多い養老先生に、「子育てがつらい」ことの原因や、それを乗り越えるためにはどうしたらいいのかをうかがいました。
子どもはそもそも思いどおりにならない存在
子育てには「努力・辛抱・根性」が必要なんです
最近のお母さんが子育てをつらく感じるのは、子どもの扱いかたがヘタだから。子どもは「自然」な存在なので、思いどおりにならないものですが、今のお母さんは都会で育ったから自然とのつきあいかたがヘタなんですよ。
ちょっと話が飛ぶようですが、子育てって「手入れ」なんです。たとえば自然をそのまま放置すると、屋久島などの原生林になり、完全に人工化すると新宿などの人工的都市になる。「手入れ」すると、「自然」は田や畑や里山になる。里山の風景は人工的に作ろうと思って作れるわけでなく、手入れしながら自然にできあがったものなんです。「手入れ」に必要な条件は毎日毎日やること。雑草が生えれば抜くし、畦がくずれれば作り直すし、虫がいればつまんでとる。これは農作業ではあたりまえのこと。そして「子育て」も全く同じです。ほっとけば原生林状態になり、社会で生きにくくなってしまうので、毎日やかましく言って少しずつ修正していく。でもどんな子になるかはやってみなくちゃわからない。まあ、原生林でもなければ、新宿でもない、その間の幅広いどこかにおさまるくらいしかわからないんです。
「手入れ」をする場合、重要なポイントは相手は「自然」だっていうことをしっかりわかっていること。本来、思いどおりになるものではないけれど、手入れによってはなんとかなるくらいのものだということを理解することです。
子育てはたいへんであたりまえ努力・根性・辛抱が必要です
自然のものと、人間が作ったものに対しては接しかたが全くちがいます。人間の作った社会では、しかたがないということがない。つまり街中の道路に穴が開いてそこに落ちてけがをした人がいたら、だれかの責任になります。でも山の中に穴が開いてけがをした人がいてもだれの責任でもない。自然の世界では、自然は勝手に進行するんだから、それを上手に利用しながらこちらが生きていくしかないんです。
「子育て」も「農作業」もこの「自然」を相手にしている同じ行為。だけど人間の作った人工の社会でずっと生きてきた人が、突然自然状態で入ってきた「子育て」というものをうまく生活の中で折り合いをつけていくのはむずかしいんですね。生活の中にほかに「自然」を相手にする要素が全くないわけだから。
農作業を考えればわかりますが、「手入れ」に必要なのは「努力、辛抱、根性」。だから子育てがたいへんなのはあたりまえ。いわば、山林原野を里山に変えていくのですからね。育てやすい子なんてそういません。
育児に協力しない夫を妻は愛せない!?
子育てでは今、夫の役割がとても問題になっています。国立精神・神経医療センターの菅原ますみさんのデータ(下記グラフ参照)でもわかるように、子育ての協力度が高い夫には愛情が増し、低い夫には愛情が下がるものなんです。
また、夫個人の協力も問題ですが、それをとりまく環境も大きいですね。たとえば、妻の旅行中にたまたま子どもが病気になり、夫が会社を休むと上司が「お前何やってんだ?」と言い、祖父母は「母親はどこへ行ってる?」と言う。子育ては母親の責任だという社会的圧力が非常に大きくあるんですね。そして、母親のほうもその社会的圧力をあたりまえだと思っています。だから電車の中で僕がうるさい子どもを叱ると、母親がムキになって僕に言い返したり、すごくしょぼんとしちゃったりする。子育ては母親ひとりの責任じゃないから、気にすることなんかないのに。
たとえば子どもが不良になったとしても「それは母親だけの責任じゃなくて、周りで見ていた大人たちの責任でもあります。子どもは私だけのものじゃありません」と、母親は言っていいと思うし、社会も母親に責任を押しつけてはいけないと思います。
親以外の人間も子育ての責任を持てば、母親の肩の荷も軽くなるんです。困ったことに現在は社会だけでなく、夫も子育ては妻の責任だと思っているんですね。でも、子育ての責任は母親が持つといっても、母親がいない子だっていますしね。要するに母親はいてもいなくても子どもは育つと思えば気がラクになりませんか?
子育てがつらいときは、夫に協力してもらうのが大事
とりあえず、子育てがつらいなら、もう少し周りの人たちに子どもを預けるのが一番だと思います。夫にはもっと責任を持ってもらったらいいでしょう。妻が子育てをつらいと感じていることをわからない夫はたくさんいるけど、それは夫が理解しようとしていないだけです。また、人が何をつらく思っているのかは、なかなかわかりにくいものなので、夫には客観性を持たせて説明するといいでしょう。たとえば菅原さんのデータを見せて説得するといいかもしれません。
男性より女性のほうが子育てに向いてるなんて言われるけど、そんなデータ(下記グラフ参照)はないですね。性差よりも個人差が大きい。子育ての面倒を引き受けるいさぎよさが男性にはないのかもしれません。そういうふうに育てた母親にも責任があるんですけどね。また、相手は「自然」なのだから、理想どおりに育つとか、マニュアルどおりに育つなんてことはない、ということも忘れずに。
子どもは「何もわからない」は大人の思い込み
「何もわからない」子どもといっしょにいるとつらいって言う人もいるけど、子どもって意外に何でもわかっていて、特に感情面は非常によくわかっています。子どもが「何もわからない」と思う理由は言葉がまだ不自由で表現能力がないせい。「私の子!」と強く思い込まず、「言葉の不自由な体の小さい他人」としてつきあえば、子どものおもしろさを見つけることができて、子どもとの生活も楽しくなるかもしれません。 |
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妻の夫への愛情を左右するのは
「子どもの乳幼児期における夫の育児参加度」がポイント |
国立精神・神経センター
精神保健研究所 社会精神保健部
家族・地域研究室室長
菅原ますみ先生の調査より |
| 上のグラフは「夫婦間の愛情関係の結婚年数による推移」を集計したもの。これによると、夫の妻に対する愛情は結婚後6〜14年目で上昇し、その後ほとんど維持されます。一方、妻の夫に対する愛情は結婚後6〜14年目までは維持されるけれど、それ以降は急激に落下します。 どうして妻の夫に対する愛情がさめてしまうかという調査もあり、それによると、「妻の夫に対する愛情度」は、夫の学歴や収入、職業、就労時間などはいっさい関係なく、「子どもの乳幼児期における夫の育児参加度」に関係するという結果が出ています。つまり、家事育児への貢献度が高い夫には妻の愛情は維持されるけれども、育児参加の少ない夫に対しては、妻は愛情を感じなくなってしまうということです。 女性の育児ノイローゼの原因は「夫といっしょに子育てしている実感が持てないこと」と言われてることも合わせ、夫婦円満には夫の子育て参加が不可欠なのです。 |
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●PART1 「子育てがつらい」と感じるのはこんなとき!
●PART2 わたしたちはこうして乗り越えてます!
>PART3 養老孟司先生からよく効くメッセージ
●PART4 こうだったら子育てがラクになるのに!
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