おなかの中にいるときから赤ちゃんは小さな体でいろいろと感じています
「赤ちゃんはおなかの中のことを覚えている」というと、「そんな非科学的な」と思われる方もいるでしょう。私も最初は半信半疑でした。でも、その後クリニックを訪れるお母さんたちをはじめとして、いろいろ調査を進めるうち、子どもたちの30%ぐらいに胎内記憶があることがわかってきたのです。しかも、その記憶は、音や色、におい、味、温度など五感のすべてにわたっていました。
実際に、赤ちゃんの聴覚は妊娠18週ごろから聞こえ、妊娠28週ごろには音楽を聞き分けられるほど発達していることがわかっています。最近では視覚が妊娠7〜10週ごろから発達し始めることもわかってきました。さらにほおの皮膚感覚も、妊娠10週ごろには温度などを感じ取ることができるといわれていますから、おなかの赤ちゃんは、大人が思っているよりもたくさんの能力を持っているといっていいでしょう。
胎内記憶だけでなく、生まれるときの記憶=誕生記憶を持っている子どもたちもいます。その割合は、胎内記憶を持っている子より少し低くなって20%ぐらいです。「楽しかった」とか「気持ちよかった」というポジティブな記憶を持っている割合を調べてみると、安産だったと思っているママから生まれた子に比べて、難産だったと思っているママから生まれた子のほうにやや少ないという結果が出ました。出産のときには、オキシトシンという子宮を収縮させるホルモンが出ますが、これには記憶を消す作用があることがわかっていますし、ストレスホルモンであるコルチゾールにも、同じような働きがあることが知られています。これらのことから、出産のときに、もし赤ちゃんが「つらい」とか「苦しい」などネガティブな気持ちを持ったとしても、その多くは消されるのではないかと思われます。おなかの中ですでに赤ちゃんに五感が備わっていることと考え合わせると、「人間はみなおなかの中にいたとき、いろいろなことを感じているけれど、大部分は出産のときにその記憶を消されてしまう。それが消されずに残ったものが胎内記憶や誕生記憶である」ということができるでしょう。
今、おなかの中にいる赤ちゃんも、五感をいっぱいに使っていろいろなことを感じているのでは? ママやパパのことも、小さな体全体で感じているにちがいありません。ママやパパは、そんな赤ちゃんがおなかの中にいることを想像し、おなかに手を当てて温かみを伝えながら、話しかけてあげましょう。そして、できればさらに想像力を働かせて、赤ちゃんの気持ちを感じ取ってあげてください。それは、おなかの赤ちゃんにとっていちばんの幸せであり、ママやパパのことも、きっと幸せにしてくれるはずです。